ATの調整法の一例

 

《例》 ベンツのATシフト不良一一バキューム・モジュレータの調整不良が原因
車名:メルセデス・ベンツ500SEL
AT型式:722・3−1(4速AT)
年式:87年
走行キロ数:2万km


 NレンジからDレンジにシフトしたら,2〜3秒間のタイムラグがあり、つながるとき
には大きなショックが発生する。フィーリングで表現するとDレンジへのシフト時に「ウ
ーンウー,ガッツン」というつながりかたである。
トラブル症状を確認すると「N−Rレンジは正常」(タイムラグ‥小,ショック:小四
→Dレンジ,そのほかの前進用レンジ(3・2・1)のすべてでトラブル症状が出る」と
いうことになる0ベンツのATが古くなってトラブルを発生する傾向としては,

@シフトフィーリングが悪くなってくる,

A前進/後進側を比べると,前進側の「滑り」または「シフト・フィ
ーリングが悪い」などが発生し・症状が悪化
していくという場合が多いようだ


 要するに,ガソリン車ではスロットル・ワイヤが伸びたり,スロットルバキューム・ダ
イアフラムスプリングの欠損によりスロットル油圧が低下する。これにより・ライン油圧
(ワーキング・プレツシヤ)も低下してクラッチやプレーキのトラブル(滑り)に至る
 そして,ライン油圧が後進側よりも前進側が低く設定してあるために,前進側のほうか
 らトラブルが発生する。ジーゼル車では,バキューム・ポンプで負圧を作り,バキューム・モジュレータで調整
してATに導き,ガソリン車と同様に変速制御とライン油圧制御に使われる。
 この作業は細かなサービス・データはなくても,車載状態で作業ができるので「現在の
位置にマーキング」して徐々に調整していき,走行テストをしながらフィーリングのよい状態にしていく。
 具体的な調整要領としては,@スロットル・ワイヤ式は張ればスロットル油圧は高くな
り走行フィーリング(加速性)はよくなるが,変速ショックは大きくなる。逆に,ゆるめれ
ば変速ショックは小さくなるが,クラッチやブレーキの滑りにより,走行フィーリングは
悪くなってしまう。Aバキューム・スロットル・バルブ式は,アジャスタを締め込むとスロットル油圧は高くなる。
 このアジャスタはC6図のような形状でAT本体の左側面に配置されており,

バキューム・ホース横のゴム・キャップをはずす
と,内部に小型のT型レンチがセットされている(取りはずすことも可)。このレンチ(ア
ジヤスタ)は1コマずつノッチが付いているので手応えで回り具合が確認でき,締め込め
ば(1ノッチで,かなりフィーリングが変わる)スロットル油圧は高くなり,このぶんライン油圧も上昇する

(作業前に元の位置のマーキングを忘れないこと)。
 今回のトラブル症状からして「アジヤスタの締め込みすぎ」のようだ。もちろん,AT
のトラブルシュートの基本であるATFの量と油性などの点検も忘れない。
 今回のサービスは,AT本体のバキューム・モジュレータのアジヤスタを1コマねじも
どすだけであった。これでNレンジからDレンジ,その他の前進レンジへのシフト・フィーリングは正常となった。
 通常は先にも述べたとおり,ダイアフラム内のスプリングが徐々に欠損していき,この
ぶんをアジャスタの締め込みでスプリングを回復させる作業になるが,

ほかのサービス工場においてバキューム・モジュレータの調
整をして「締めすぎの状態」にした結果,今回のトラブルに至ったものと考えられる。
 今回は,ちょっとした調整不良により発生したトラブルであった。ATのトラブルシュ
ートの基本は走行テスト。つまり,走りがよければすべて良である。また,サービスの前
と後にしっかりとした走行テストをする必要があり,このためにも可能なかぎり,いろい
ろな自動車(国産車,外車とも)にしっかりと乗り,それぞれの車をできるかぎり知る必要がある。
 最後に,ベンツのATの三つのサービス・ポイントを述べよう(C7〜8図)。
 @ATFは2万〜3万kmで交換し,同時に必ずフィルタも交換。ベンツのATは

フィルタの目詰まりによるライン油圧低下でクラッチとブレーキが滑り,AT内部の不良とな
るケースが多い。また,サービスする者としては「ATFの漏れは一晩で2〜3滴は気に
しない範囲」としたほうがよいようだ。
 Aショックやタイムラグが大きいときは,バキューム・モジュレータの調整が可能であ
る(AT本体横にアジヤスタを設けている)。また,このアジヤスタで調整してもフィーリ
ングがあまり変化しないという場合,AT本体(オイル・ポンプ/オイル・フィルタ/コ
ントロール・バルブ/クラッチ/ブレーキなど)の不良が考えられる。
 BATが不調がなりはじめたら「ATのオーバーホール」を考える。IiMWのATで,
ときどき経験する「まったく走らない」というトラブルはベンツでは少なく,「強いAT」
というのが,私のベンツのATに対する印象だ。したがって,バキューム・モジュレータ
での調整で性能変化が少なくなったらオーバーホールの時期といえる。

 

 

 

 

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